「おはよー、妃芽ちゃん」
翌朝、登校すると昇降口でちょうど妃芽ちゃんが上履きに履き替えているところだった。
妃芽ちゃんがビクッと肩を揺らして、私を見る。
「妃芽ちゃん…?」
「…あ、ううん。おはよ」
妃芽ちゃんの様子がおかしかったのは一瞬だけで、すぐにいつも通りの可愛らしい笑顔を浮かべた。
私も上履きに履き替えて、自然と並んで教室まで歩き出す。
「…あの、一花ちゃん」
妃芽ちゃんが控えめに話しかけてきた。
「ん?」
「一花ちゃんって、あの…他校のメガネの子と付き合ってるの?」
他校のメガネ…?あぁ、樹くんのことか…って、付き合ってる!?
「えぇ?いやいや、付き合ってないよ!」
なにせ私は恋愛レベルが低い!
正直こんな風に話題を振られるだけで顔が熱い。
明らかにドギマギしだした私を、妃芽ちゃんは冷静に見つめていた。
「…え?そうなの?」
「う、うん」
まぁ告白はされたけど…!
あの時のことを思い出すと汗をかいてきそうだ。
パタパタと顔に手で風を送る私に、妃芽ちゃんが少し低い声で聞く。
「じゃぁ、玲は…?」