「…一花ちゃん?」



不思議そうに私の顔を覗き込む妃芽ちゃん。



「どうしたの?なんか顔赤いけど…」


「えっ…」



顔赤い!?




最悪だ。


あの夜を思い出して赤面するなんて!!





「なっ、なんか暑くない!?ここ!」




慌てて顔を手で仰いで誤魔化した。






横からじっと妃芽ちゃんの視線を感じる。




…まさか嘘だと思われてる?






その時、ふと向かいの校舎の窓から私たちを見つめる人影に気づいた。



三人組の女子。



その真ん中にいるのは。




「…九条先輩?」




艶やかな黒い巻き髪。

存在感のある大きな瞳。

凛とした雰囲気。



…間違いない。




九条先輩は私と目が合うと、取り巻きを引き連れて窓から姿を消した。




今の視線は、私というよりも、妃芽ちゃんに注がれていたような…





“女からのいらない嫉妬買いすぎないといいけどね”




ふと頭に浮かんだのは、妃芽ちゃんが転入してきた日の、みのりの言葉。



もしかして妃芽ちゃんも、あの時の私みたいに…





「妃芽ちゃん」


「うん?」




妃芽ちゃんがクルンと大きな瞳で私を見上げる。




「あんまりアイツ…天王子に、近づかない方が…いいかも」