「…一花ちゃん?」


固まった私の顔を、樹くんが覗き込む。



「どうかした?」


「…や、えっと」



そりゃ樹くんから誘われたとき、デートじゃん!って私も一瞬思ったけど。



樹くんもデートのつもりで誘ってた、ってこと?




「…俺なんかマズいこと言った?」



自覚ないのか。

きっと樹くんにとってそんなに深い意味を持つ言葉じゃないってことだよね。



「ううん、何でもない!水川呼んでこよっか?たぶんまだ教室とかに…」


「いや!」


「ん?」



珍しく樹くんが大きな声を出した。



また気まずそうにメガネを押し上げる樹くん。…癖なのかなぁ。




「開人は…大丈夫」


「そう?」


「うん。それよりも、一花ちゃんこの後予定ある?」


「この後?別にないけど」


「じゃ…カフェでも行かない?」


「カフェ?いいよ」



樹くんお茶したい気分なのかなぁ。



「え?ほんと?」



なぜか念押しするように確認してくる樹くん。



「うん」



頷いた。

だって樹くんは友達だし。




「…ありがとう」



樹くんが嬉しそうに微笑む。



自然と並んで歩き出した。



「どこにしよっか」


「そうだなぁ、駅前にたしか…っわ!」



グイッ!と後ろに強く引っ張られた腕。


振り向くと、息をきらした天王子が私を睨みつけるようにして立っていた。