知らなかった。



水川ってドSだったんだ…。




“傷口に塩塗りたくってやんの”



帰りのSHRを終えて、昇降口でローファーに履き替えながら今日の水川の発言を思い出していた。



あんなに人畜無害そうな無邪気な笑顔振りまいてるくせに。


やっぱりあの人ってよく分かんない…。




それにしても、まさか妃芽ちゃんが天王子の元カノだったなんて。



水川が途中で女子に呼ばれたせいで聞けなかったけど、何で別れたんだろ。



天王子、女アレルギーなのに、妃芽ちゃんは大丈夫だったのかな?




「一花ちゃん!」



そっか、天王子の女アレルギーが発動しないのって私だけじゃ……ん?



自分の名前が呼ばれたような気がして顔を上げると、校門のすぐ傍に樹くんが立っていた。



…え?何で…



「樹くん!?何でここに?」



駆け寄ると、樹くんが少し気まずそうにメガネを押し上げた。



制服姿の樹くん。私が見たことのない学校の制服だ。濃い緑の、落ち着いた色合いのブレザーが樹くんによく似合ってる。



「ちょっと用事でこの辺り来て、そういえば開人と一花ちゃん通ってる学校も近所だなって。…ラインしたんだけど、見てない?」


「…ごめん、全然スマホ見てなかった」


「いや、それは全然いいんだけど。ごめん、なんか待ち伏せみたいなことして。…一花ちゃんに、会いたくてさ。この間のデートすごく楽しかったから」


「それは私も楽しかっ…」




…ん?


デート!?