「あー、元カノだよ」



サラッと言う水川に拍子抜けした。



「は…元カノ!?妃芽ちゃんが天王子の!?」


「そー。中3の時ね。半年くらい付き合ってたかな」



何でもないことのように言う水川。


あんな可愛いくていい子っぽい子が天王子の元カノ…!?


ていうか、天王子って女アレルギーなんじゃ…!



「?」をたくさん飛ばす私の様子がおかしかったのか、プッと水川が吹き出した。



「一花ちゃん、いつもに増して面白い顔♡」



おい、いつもに増してってどういう意味だ。



いや、でも今はそんなこと突っ込んでいる余裕はない。



「妃芽ちゃん、天王子に会いたくて転入してきたって言ってたけど…」


「ねー、俺もびっくりしたよ~」



いつも通り間延びした声の水川は、全然びっくりしているようには見えない。



「玲に会ってくれってラインしたのは俺なんだけどね。まさか転入してくるとは思わなかったなぁ~」


「え…何で水川がそんなこと?」


「だってアイツがいつまでもグダグダしてるから。死ぬほどイライラするんだよね、ほんと殺したくなるくらい」



…殺したくなるって…



ギョッとして水川を見たけど、水川はいつもの緩い笑顔だった。




「大事な友達だから、傷口に塩塗りたくってやんの」