愛されプリンス½







昼休み。



A組の入り口から中を覗くと、一番窓際の後ろの席で、女子に囲まれている天王子を発見した。


女子たちの真ん中で爽やかに微笑んでいる天王子。いつ見ても嘘くさい笑顔だ。



ていうか…



呼びずらいっ!とんでもなく呼びずらい!




私は思わず一歩、後退った。



あんな女子の大群に取り囲まれている天王子を呼び出すなんて、あまりにも目立ちすぎる。



きっと「は?村人Eの分際でプリンスを呼び出すとかまじ調子乗り過ぎじゃね?」って思われる!最悪、またあの、九条先輩の時みたいに後で私が呼びだされる!



…出直そう。



クルリと方向転換しかけたところで、じっと10センチ下から私を見つめる妃芽ちゃんと目があった。



「村田さん…?」



クルンとした黒目がちの大きな瞳。



んんんやっぱり可愛い!




再度A組に向きなおった。



ス、と大きく息を吸って。




「天っ…「あっれー、妃芽じゃん?」




ゆるりと間延びした声。



振り向くと、両腕に女子を絡みつかせた水川がニコニコ妃芽ちゃんに手を振っていた。



「開人!」


「昨日ぶり~♡やっぱうちの制服似合うね~。ほんと昔から何でも着こなすよな、妃芽は」


「そんなことないよ。もう、開人は相変わらずだね」



親しそうに話す二人。


天王子と妃芽ちゃん、二人の雰囲気とは全く違う。まるで昔からの旧友のような、穏やかで気ごころ知れた雰囲気。