「村田さんっ!」
教室を出てトイレに向かう途中、後ろから可愛らしい声が追いかけてきた。
…もしや!?と思って振り向くと、そこには顔だけではなく声まで可愛らしい妃芽ちゃんが。
妃芽ちゃんがトコトコ追いかけてきて、私の隣に並んだ。
「どこ行くの?」
「トイレだけど…」
「私も一緒に行っていい?まだ場所がよく分からなくて」
妃芽ちゃんは今日転入してきたばっかりだもんね。分からなくて当然だ。
「うん、もちろん」
私は妃芽ちゃんと並んで歩き出した。
後で校内案内もしてあげようかな。
「…あの…」
10センチ下から、私を見上げる妃芽ちゃん。
「何?」
「…玲って何組なのかな?」
「玲?」
玲とは…あの私が現在進行形で大嫌いの棚上げプリンスのことだよね。
「あいつはA組だよ」
「そっかぁ。あの、村田さん。一つお願いがあって…」
「お願い?」
「昼休み、玲のこと呼んでくれないかな」
「…え?何で?」
「玲と話したいの。だけど玲、私が呼んでも来てくれるか分からないから。村田さん、玲と仲良いんでしょ?昨日も一緒にいたし」
「いや別に、仲良いってわけじゃ」
「ダメ?」
妃芽ちゃんの“潤んだ瞳で見つめる”の攻撃!
…効果は絶大だ!
「いいよ!」
私は速攻で承諾した!
「ありがとう♡」
にっこり嬉しそうに微笑む妃芽ちゃん。
んんん、やっぱり可愛い…!
だけどあいつ、私が呼んだところで出てくるのかな。
昨日、喧嘩みたいになったばっかりだしなぁ。



