その予感は的中した。
休み時間になると、一気に男どもが妃芽ちゃんの元へ!
「どっから来たの?」
「ライン教えてくんない?」
「俺と付き合わない?」
…男どもの勢いに席を追われた私は、みのりの席に避難した。
「まるで女版のプリンスだね」
みのりが遠巻きにその様子を眺めながら言う。
た、たしかに。
「でも、あんだけ話しかけてくれたら心強いだろうな…」
私も転入生だったから、転入するときの不安な気持ちはよく分かる。
誰かが話しかけてくれるだけで、すごく心強くて救われるんだ。
私の言葉に、みのりは「まぁそうだけど、でも」と少し眉を寄せた。
「女からのいらない嫉妬買いすぎないといいけどね」
「嫉妬…?」
みのりに言われてはじめて気づいた。
女子たちが、男子に囲まれる妃芽ちゃんを面白くなさそうに見ていることに。
「女子コワ…!」
「ま、私はプリンスにさえちょっかい出さなければなんでもいいけど♡」
興味なさそうに妃芽ちゃんから視線を逸らすと、みのりが胸ポケットから一枚の写真を取りだした。
「何それ?」
「去年の学祭のときのプリンス!」
見ると、舞台上でマイクを握ったプリンスが何やら熱唱している写真だった。
「…はぁ…」
「あっ著作権なら問題ないから!うちの新聞部が撮ったやつだから!」
高かったんだからー♡と、うっとりと写真を見つめるみのり…。
「…トイレ行ってくるわ」
私はそっとその場を離れた。



