天王子がうちに来たことは何度もあるけど、私が天王子の家にいったのは初めてだ。
中は意外と綺麗で片付いていた。
いや…というより、物がない。殺風景。
生活感のないキッチンのシンクに土鍋を置いた。
「まだ温かいから、今ならすぐ食べれるよ」
「…おー」
天王子はソファに座って、ぼんやりしていた。
なんだか心ここにあらずって感じだ。
…やっぱりなんか、おかしい。
「あのさ」
「…なんだよ」
「今日屋上で会った…妃芽ちゃん?って、知り合い…なんだよね?」
「………まぁ」
なんだか歯切れの悪い天王子の返事。
「中学が同じだった、とか?なんか、天王子のために転入してきた、みたいなこと言ってたけど」
「………」
「すごい可愛い子だよね。実は私、前に一回買い物してたら会ったことあって。すっごい偶然…」
「うざい」
バッサリ切り捨てられた。
天王子が不機嫌そうに私を睨んでる。
「あいつの話をお前がすんな」
「…はぁ?何それ」
「人のプライバシーにずかずか踏み込んでくんな、図々しいんだよ」
人のプライバシー?…ずかずか?