それにしても、まさか樹くんから誘ってくれるとは…人見知りって言ってたのに。
少しは私に心開いてくれてると思っていいのかなぁ。
「どこか行きたい店ある?」
一段上のエスカレーターに乗った樹くんが振り向いた。
「あ…そうだな~。決まったお店はないけど、服とか見たいかも」
「オッケー。じゃ、ブラブラしようか」
ふっと優しく微笑む樹くん。
この落ち着きっぷり、タメの男子とはとても思えない…。
だってクラスの男子ってもっとバカだもん。教室でいつも騒いでるし、バスケットボールとか投げてるし。
それか…
私はタメの男子を、あと二人思い浮かべた。
水川…は、不健全エロ野郎だし、
天王子は一見大人びていて品も良く見えるけど、それは猫かぶりの作られた姿だし。
「どうかした?」
エスカレーターからおりて、また隣に並んで歩き始めた私を樹くんが不思議そうな顔で見下ろす。
「んー?樹くんってやっぱり大人っぽいなぁって思って」
「うそ、全然そんなことないよ」
その口調はやっぱりどこか大人びていた。