「ただいまー」



なんて日だったんだ。



私は重い足を引きずるようにして、なんとか自宅のマンションに生還した。



右手には今も、プリンスの顎下に渾身のグーパンチを決めた感触が残っている。



いやぁ、あれは我ながらいいパンチだった…じゃなくて!


あいつ。あの男。


性格が最低最悪なのにとどまらず、しかも変態だったとは。


女子の胸を断りもなくあんな堂々ともっ…も、揉むなんて…!!!



「断じて許さんー!!」


勢いよくリビングのドアを開けると、リビングと続いているカウンターキッチンで、料理をしていたお母さんがパッと顔をあげた。


「おかえり一花!何かあったの?」

「……まぁ、色々と…。それより…なんか今日、ご飯すっごく豪華じゃない?」



帰ってきたばかりだと言うのに、既に食卓には何品もの料理が並べられていた。


しかもいつもより豪華で、品数も多いような…。



「…まだお父さん出張から戻ってこないよね?」



うちのお父さんは世界中に支社を持つ大手企業の商社マンで、一年の約半分を海外で過ごす。今もニューヨークに長期出張中だ。