電気がついているから中にいることはバレている。居留守は使えない。
…誰…?
心臓をドコドコ言わせながら、音をたてないように歩いて、インターホンのカメラを覗くと
「…え…」
そこには。
「おっっせぇんだよ!とっとと開けろよこのグズが!!!」
ドアを開けるのと同時にそんな怒声が降って来た。
私を押しのけるようにして入って来た天王子はびしょ濡れだ。
雨の勢いは私が帰ってきた頃とは比べ物にならないくらい強くなっている。慌ててドアを閉めた。
「だ、だってまさか天王子とは思わないしっ…いつもはもっと早いじゃん!」
言い訳すると、シャツで顔を拭いながら天王子が言う。
「撮影だったんだよ、この雨で中止になったけど。あ、シャワー借りるわ」
「えっ…シャワー!?」
まだ“いいよ”なんて言ってないのに、勝手に部屋に上がり浴室の方へ歩いていく天王子。
さすが同じマンションの隣人、間取りは全て把握されている…
なんて妙なところに感心している場合じゃない!



