それから天王子はウチに来なくなった。
悲しみに暮れているお母さん。
ある朝偶然ゴミ捨て場で会ったときには、「しばらく行けない」とだけ伝えられたらしい。
「喧嘩でもしたの?」と聞かれた。
「喧嘩したなら早く謝っちゃいなさい!天王子くんあんなにイケメンなんだから、あっという間に他の女の子に取られちゃうわよ!!!」と熱く語られたりもしたけど。
天王子が最後にウチに来た日のことを思い出してみる。
やっぱり何度思い出しても、―――うん。私まっったく悪くないわ。
むしろアレを喧嘩というのだろうか?
アイツが勝手に“好きとかそんなの全部幻想。笑わせんじゃねーよ”とか怒り出して。
うぜぇを連呼して。
帰っただけだ。
たったそれだけ。
別にあいつと私の間には何もない。