私の学校には“プリンス”がいる。




「っきゃぁぁぁぁぁ!プリンス今日も超っ…かっこいい〜っ!!!」


「こっち向いて〜っ!!!」


「てゆーか付き合ってぇぇぇ〜っ!!!」




まるでアイドルのコンサートさながらの盛り上がりを見せる朝の校門前。



そんな女子の大群の真ん中を、颯爽と歩く一人の男。



スラッと高い身長に長い足。

柔く染められた茶髪にバカみたいに小さな顔。

マツエクしてますか?と聞きたいくらいの長い睫毛に、どこか色気を感じさせる切れ長の瞳。




ふと、彼が足を止めた。



自分に黄色い歓声を飛ばす彼女たちを見渡して、一言。完璧な微笑みつきで。



「おはよう。今日もみんな可愛いね」



ギャァァァァァァ〜!!



地響きのような悲鳴が木霊した。う、うるさい。近所迷惑じゃないのコレ。




完璧な容姿に完璧な立ち振る舞い。


彼は一見、“プリンス”と呼ばれるのにとても相応しい男だ。そう、一見、ね…。



二階の教室からその騒ぎを傍観していた私のブレザーのポケットが震える。


スマホを取り出すと一通のLINE。




“ブスな顔してこっち見てんじゃねぇぞブス”



…階下にいるお上品なプリンスからはとても想像し難い粗暴なお言葉。




“ほんと、裏表ありすぎて笑える”




送信。


奴のブレザーのポケットが、今度は震える番だろう。