belief is all 『信念がすべてさ』

「わあ、すげえ数だなあ」
三条河原町の路上に停めていた車に戻った時、土曜の夜の暴走族が凄い数で街を流していた。
「あいつらちっとうるせえな。よし俺が追い払ってやる」
「シノブ!止めろよっ!!」
俺は無差別に選んだ族車の一台のボディに蹴りを入れ、車から降りるよう合図した‥。



 が、

 族等数人に囲まれ、かかとで落とされた鼻から滝のように血が流れ落ちた。全員でやられていたら命は無かっただろう。道路にのされて倒れた俺は
(このままでは済まさない)
と、走り去る車のナンバーを眼に焼き付けていた。

 部屋に戻り、その夜顔を出した父親に経緯を話し怪我の症状を見せた。すると、ここに居るようにとだけ言い残して部屋を出ていった。

 数時間後、電話が入る。

「さっきの男連れて来ているから、お前こっちへ来い」
「分かった」
事務所へ入ってみると、さっき俺の鼻を折った若い男が床に土下座していた。俺を見るなり
「申し訳ございませんでしたっ!」
命だけは助けてくれと涙声で哀願する様子だった。木刀や警棒で殴り込まれていたようで、傷だらけの顔が相当腫れていた。
(可哀相だが、仕方ないな)
「こいつで間違いないか」
「確かにこいつだ」
子供の喧嘩、お互い様の部分もあるのだが仕方ない。人生調子に乗っていると痛い目に合うものだ。

 しかし‥‥やがて俺は何か少し違うと感じ出す。

「へえ、こんな大きなお兄ちゃんがいらっしゃったんですか」
「かっこよくて、ホントにいい男ですねえ」
「さすが凄いやり手に見えますねえ」
 家に出入りする多くの人達は俺を見ると決まってべた褒めし、
「いい男だ」「いい男だ」
と散々繰り返してくれた。そして帰り際、
「お父さんに宜しくお伝え下さいね‥‥」
最後に必ず決まってそう言うのさ。