「アイス買ってきて❤️」
私は、わざとらしく顔の前でお願いポーズをする。
すると永樹(とき)は、少し横目で私を見てからプイッとそっぽを向いた。
「は?自分でいけよ。」
「えーー」
私は机にだらんと顔を伏せると、ケチと小さな声で呟いた。
「今日で最後なんだぞー。」
私はそっと顔を上げると、そう言った。
ふざけた様子で言ったけれど、本当はすごく寂しかった。
ずっと考えないようにしているけれど、
皆いつも通りだけど、
きっと皆、心の奥では寂しいんだよね…
「……」
永樹はそんな私を見て、何かを察したのか私の頬をぷにゅっとつまんだ。
「…なに?」
永樹は頬をつまんだまま、じっと私を見ている。
「アイス何がいいの?」
「いちご!!」
一気に元気になった私を見て永樹はくすっと笑った。
「了解!」
永樹は口元をニッとさせて笑うとアイスを買いにいってくれた。
「……」
なんとなく私は、永樹の席に座る。
明日は卒業式。
私は頬杖をついてじっと窓の外を眺めた。
空はいつものように青くてどこまでも続いている。
「…卒業したくないや…」
ずっと広い空を眺めて、私はそっと本音を呟いた。
しばらくすると永樹が帰ってきて、「ん。」といつものいちごのアイスを買ってきてくれる。
「ありがとう」
私はそう言うと袋を開け、アイスをひと口がぶっとかじる。
…んー、おいひい…
私はいつもの大好きなアイスを食べ、笑顔になる。
「てかお前なんで俺の席座ってんだよ。」
あれ、なんで私座ったんだっけ。
「わかんない。なんとなく?」
「なんだそれ。」
永樹はそう言って、いつものようにニッと笑った。
永樹は私の隣の席に座ると、ソーダのアイスを食べ始めた。
「永樹っていつもソーダ食べてるね」
私がそう言うと永樹はくすっと笑った。
「お前もいちご食べてるとこしか見たことねぇよ」
「だって、いちごおいしいよ?一回は食べてみ。」
私はそう言っていちごのアイスを永樹に向ける。
すると永樹は驚いた顔をしたあと、
パッと目を反らした。
気がつけば永樹の耳はほんのり赤い。
…あ。
…恥ずかし…
「あ、ごめ_」
私は差し出したアイスを引っ込めようとする。
_ぎゅっ
「……!?」
永樹は引っ込めようとした私の手をぎゅっと掴んだ。
「…食べないって言ってない」
_シャリ…
……ふぇぇ?!
永樹はシャリっと音をたてて、いちごのアイスをひと口かじった。
_ドキドキ
心臓の音がうるさくて、
「お、うまいじゃんこれ」
ニッと笑う笑顔が可愛くて、
「ひ、ひと口でかすぎ!」
「は?いいだろ別に。この食いしん坊め。」
私はまた、この気持ちをごまかしてしまうんだ。