もうすぐ冬休み。

みんな今からワクワクしてる。

「愛理〜、3年A組のLINE入ればー?みんな入ってるし!」

親友の富岡 伊織がそう誘ってきた。

「うーん。じゃあ入ろうかな〜。伊織、招待してくれるー?」

「もちろん!」

家に帰ったら、私はすぐにグループLINEに参加した。

すると同時に、クラスの男子の、田辺 翔に勝手に追加された。

(勝手に追加しないでよ…)

自分のスマホは高校からなので、私は親のスマホでLINEしていた。

それで親に、あんまり友達増やしすぎないでね、と言われていたから、正直嫌だった。

そんなことを考えてるうちに、翔から1つのLINEがきた。

『よろしくねー!!!』

元気な挨拶のあと、可愛らしいクマのスタンプも送られてきた。

(ぷっ、かわいいなこの人)

男子とのLINEは、!とかスタンプとかがいつも無いから、驚いたけど、好印象だった。

そこから、私と翔の毎日のLINEが始まった。


毎日毎日、LINEをした。

好きな音楽の話とか、その日の出来事とか…

あと、月が綺麗っていう話もたっくさんした。

『月がすっごい綺麗だよ!外に出て見てみて!』

『今日ね、自転車買ってもらったんだ〜!』

『〇〇って曲いいよ!聞いてみて!』

いつも、翔から話題を振ってくれた。

それが、私はすごく嬉しかった。


ある日、いつものようにLINEしてたら

『愛理って好きな歌手いる?』

今までずっと「垣本」って呼ばれてたのに、「愛理」って、名前で呼んでくれた…

前に、愛理って呼んで!って言ったけど、その時は恥ずかしいよ、って言って呼んでくれなかったのに…

私は嬉しすぎて、
『初めて名前で呼んでくれたね!』
って送った。

いきなり、何の前触れもなく呼ばれたら、キュンとしちゃうじゃん…

その時から、私は翔を意識し始めた。

いや、翔に対する自分の気持ちにやっと気付いた。


私は、翔のことが好きなんだ…



それから何週間か過ぎて、翔とのLINEが毎日の日課になった頃…

『愛理ってさ、好きな人とかいる?』

『…そういう翔はいるの?』

『俺はいるよ』

『そうなんだ』

『じゃあ、当ててみて!俺も愛理の当てるから!』

『いいよ!』

そこから、お互いの好きな人を当てるクイズが始まった。

私は翔がくれたヒントをもとに、2人にまで絞ることができた。

それは、同じクラスの子と……私だった。

胸の鼓動が高まる。

(もしかして…)

期待が胸いっぱいに広がる。

(私…)

そして、顔が熱くなる。

(翔と…)

心臓の音が脳にまで響く。

(……両…想い…?)

私の頭がその言葉で埋め尽くされた。

私じゃなくて、もう1人の方かもしれないのに、私の中から謎の自信が湧き出てきた。

私の悪い癖。

最悪の場合を想定せずに、いい方向にしか目が向かない。

『愛理の好きな人、全然わかんない〜!もう一個ヒントちょうだい!』

私は、今しかないと思った。

(きっと大丈夫)

でも、いざとなると、少し不安も出てきた。

いつもみたいに、後悔したくない…

翔に、私の気持ち…

気づいて欲しいよ…

『じゃあ大ヒント!今、その人は1番後ろの席だよ。』

同じクラスの1番後ろの席…

私のクラスは、男子の列が3列ある。

その後ろの席のうちの2つは、不登校の子の席と、転校した子の席だった。

あとの1つは…

…翔の席。

(私…伝えられた…?)

もう、過去は変えられない。

あとは、最高の未来を祈るだけ…

心臓が口から出そうってこういう事か…

『え…?』

(終わったー…)

これ、絶対に引かれたやつだよね?

『ほんとに1番後ろの席…?』

『うん』

『ありがとう。嬉しいよ。』

『いえいえ、そんなそんな…』

緊張すると言葉が硬くなる私。

(あー、フラれるのかー…)

『実はね』

『なに?』

『俺もなんだ。』

(………はい?)

頭が真っ白になった。

『え!?』

『LINEとかしてるうちに、気づいたら好きになってたよ。』

(嘘…)

私の目頭が熱くなる。

(嬉しい…)

『私も、気づいたら好きだった。』

(翔も、おんなじ気持ちだったんだ…)

最初はあんなに自信があったのに、あとの方は自信が全部なくなってた。

嬉しくて嬉しくて嬉しすぎて、
こんな気持ちにはなったことがなかった。

『じゃあ、改めていうね。』

『はい。』

『俺と、付き合ってください。』

ほんとに夢かと思った…

こんなに幸せになっていいの…?

幸せすぎて、逆に怖いよ…

改めていうね、って

優しすぎるよ…

今までこんなに人を好きになったことなんてない。

『私なんかでよければ、よろしくお願いします。』

『ありがとう。』

『こっちこそありがとう。』

『ドッキリじゃないよね!?』

『ドッキリじゃないよ!』

(ぷっ、かわいいなぁ)

『どうして、私のこと好きになってくれたの?』

『だって、優しいし、話てて楽しいし、気が合うから!』

ほんとに嬉しかった。

もう、嬉しいっていう言葉を超えていた。

私は、この人とずっと一緒にいたいと、心からそう思った。

『愛理』

『なに?』

『付き合うって、こんなに楽しいんだね!』

LINEは、文字だけだから、相手の表情は見えない。

でも、この言葉は、翔のクシャッとした笑顔が見えた気がした。

その後も翔と私は何十分も話した。

私は、その時、確実に青春のピークだった。

本当に幸せの絶頂だった。

翔のことが大好きだった。



でも、私はまだ知らなかった…



ピークは、過ぎ去るものなんだと…