「うわぁ~、ひっろい!!こんなとこで部活やってんの!?」

「う、うん、まぁ……………」

 和寛が燦ヶ丘高校にやって来て一週間。
 今日は愛羅と一緒に演劇部の見学に講堂へとやって来ていた。

 入ってすぐ、その席の多さと広さ、高校には似つかわしくない豪華さに驚いてこんな大声をあげたわけであるが、それで見学者の存在に気付いた逸樹と弥生が飛んでくるという事態にまでなってしまった。

「あ、あれ、愛ちゃん誰連れてきてんの」

「や、弥生先輩……え、えーっと…………せ、先週転校してきた子なんですけど、中学が一緒だったもので」

「はーぁびっっくりしたぁ………、そりゃあね、愛ちゃんが彼氏なんて作ったら今ごろ一年、地獄絵図なんだろうなあ」

「え、逸樹先輩ど、どういうことですか」

 愛羅の問いに一生懸命答えようとしている弥生を他所に、逸樹は完全に部長ぶって和寛を座席の方へと案内しにかかっていた。
 逸樹は舞台の真ん前の席のど真ん中に和寛を座らせて戻ってくると、弥生に声をかけて、舞台に部員全員を集合させた。

 その中にはもちろん梨々香もいるわけで、

「だ、誰、あの男子……………?」

「え……………?えーっとね、中二の時私達と同じクラスだった井崎和寛」

「えぇ~……………!?嘘、あんなに変わってんの、チビだったくせに」

 小声での会話。
「おーい、そこー喋るなー」という逸樹の声で、お互いにそろそろと離れる。