と、朝に流れる音楽が鳴り始め、夏哉がキョトンとしているうちに、鳴り始めて十数秒後にははなぶし先生が教科書などを入れたかごを置きに教室に現れた。

「あ、いけね」

「………………………ふぅ」

 夏哉のことを何とも思っていないとは言え、どちらかと言えば嫌いな方の部類に入るため、夏哉が愛羅から離れて席の方へと向かっていって、少しため息が漏れた。

 ____キーンコーンカーンコーン♪

 チャイムが鳴り響く。

 するとはなぶし先生の話し声が教室の前で止まり、しばらく止まった後、はなぶし先生だけが教室に入ってきた。
 教室はいつもに増して静かである。

「…………昨日も言った通り、転校生がやって来ました。今から紹介します」

 はなぶし先生はドアの方へと向かって手招きをした。
 すると、がらがらとドアを開けて、一人の少年が入ってきた。

 身長は目測で170弱か。
 髪は漆黒でさらさらとしている。
 くりっとしたつぶらな目に、すらっとした鼻立ち、薄い唇。
 身長のわりには少し幼めの顔立ちだ。
 緊張しているのか、その表情は固い。

「じゃあ、自己紹介してもらうので、静かに聞くように」

「………………井崎和寛です」

 適当に聞いていようと下を向いていた愛羅が、急に顔を上げた。

 ……ん……?『井崎和寛』って、どこかで聞いたことがあるような___気のせいか?

「……前の高校では軽音楽やってました。ここの高校には軽音楽部は無いと聞いたので、おすすめの部活があったら教えてください。これから、よろしくお願いします」

「はい。じゃあ和寛くんの席は一番後ろのあの髪が長い佐々木愛羅って子の____」

「さ、佐々木愛羅っ!?」