「……………………あいつらは………夏哉と拓真は、愛羅のことを分かったふりして、全くもって分かってないんだ。前、咲乃さんと会った日の午前にあいつらと会ってきてさ、色々話してるうちから、イッライラしてきて堪んなくなったから、思いきって爆弾落っことして出てきたんだ」

「…………爆弾」

「そうだよ。お前らがいるから愛羅が女子たちにやっかまれる、お前らよりも長いこと愛羅のこと想ってるから、もう譲らない下手に近づいてくんなって」

「あら珍しい、ここまで和寛が声を荒げるなんて。よっぽどイライラしてたんだ」

 吐き捨てるように言って、梨々香は和寛の肩を持ち、ぐらぐらと揺さぶる。
 その顔は冷たい無表情のようでいて、怒りを多分に含んでいた。
 その梨々香の表情に和寛が怯む隙も与えずに、梨々香は続けた。

「何、その時そんだけ愛羅のこと想って怒ってきたのに、今さらどうしたのよ!?そんだけ言ってきたんならそのまま突っ走っちゃえばいいのよ!何で今さら怯えてんのよ。それだけ愛羅が大事なら、それを証明して見せつけてやればいい!何!?今さら中学の頃みたいに少年に戻るんじゃないわよ、男でしょう!?」

「……梨々香…………………!」

 一気に叱るように言葉をかけて、なお真剣な表情で頷く。
 ずっと打開策の見えなかった和寛のこの先に、すっと一筋の光が差し込んだように感じた。

 そうだ。ここまで来たらもう引けない。
 梨々香の思いも、咲乃の思いも、全部背負って、愛羅の重荷を分けてもらえるまで、突っ走るしかないのだ。

「………ありがとう、梨々香。僕、なんとかやっていけそうな気がする」

「……………そう。もう落ち込んだような顔を愛羅に見せるんじゃないわよ?」

「分かってる。ありがとう」