「………愛羅が死ぬほど心配してた。何があったのよ、拓真と」

「心配しないでって言ったのに…………」

「心配しないでって言ったら余計に心配しちゃうのが愛羅だって、和寛もよく知ってるでしょう?」

 そこまで梨々香が言うと、思い当たる節があったのか、和寛は萎れるようにへなへなと座り込んだ。
 それに目線を合わせるように、梨々香もしゃがみこむ。

「………………そこまで愛羅に言いたくなくて、相手があの土赤拓真だなんて、原因は私にも分かってるわ。伊達にあの子の変な虫除けしてないからさ、嫌でも分かるわよ。愛羅への恋心でしょ…………図星ね?」

 梨々香の言葉に少し顔を背けた和寛に、やっぱりと言わんばかりの声が降ってくる。
 握られた和寛の拳は微かに震えていて、梨々香の目もそれを見逃さなかった。

「…………そういうことなら、私だって愛羅に内緒にするから、全部話しちゃいなさいよ。『抱え込んだままじゃなくていい』って、最初に愛羅に諭したのは、何処の何方でしたっけ?」