「………………大丈夫……?」

 放課後。

 講堂へと向かう道、愛羅が心配そうに和寛の顔を覗き込む。
 二人の間に何があったのかと問い詰めてくることがないだけありがたいが、きっと二人の間に何か邪険なものを感じたのだろう。

「…………………まあ、基本無視のスタンスでいけば………何とかなる。何とかなるから、大丈夫、だよ」

「私にできることは___」

「ないない。ないないないっ。何にもしなくっていいよ。仕方ないことだから」

 早口で愛羅の言葉を遮る。
 そんな和寛の様子に、愛羅はよっぽど自分に言えないほど邪険なことなのだろうかと考えるばかりで、自分にできることは何もないのだろうかと漠然と思うのみだった。

「…………いつも和寛には迷惑ばっかり掛けてるから、こういう時くらい何かしたいだけなんだけど。ホント、遠慮しなくてもいいんだよ?」

「えっ、遠慮とかじゃないからっ。ホントにっ」

 そう再び早口で言うと、和寛は逃げるように早歩きをすると、講堂のドアを開ける。
 そして少し遅れていた愛羅を振り返った。

「……………大丈夫だから。ホンットに、心配しないで」

「え、あ、うん」