「机、移動させないと」

 そう言って立ち上がった愛羅に倣って和寛も立ち上がり、机を移動させる。
 机と机の間をすり抜けるように移動して、やっとその位置についた。

「………__あ、愛羅ちゃんだ」

 愛羅の隣は、女の子。確か……………鹿本ちづるといったはずだ。
 地毛の茶髪で、チャラいと勘違いされがちだが、かなり真面目な子。
 意地悪な子じゃなくてよかったと和寛が安心する。

「リリーからよく話を聞いてるよ!こんど、春祭の劇でまた主役を任されたんだって?」

「え、リリー…………?」

「ほら、梨々香って言った方が分かるか。仲良いんだって?あ、私、梨々香の従姉妹にあたるんだ」

 意外な話に横で聞いていた和寛まで目を丸くする。
 そして愛羅がこちらを向き、その少し間抜けな顔に少し笑った。

 そして和寛が隣は誰だろう、と横を向けば、

「…………………よお、和寛」

 最悪だ。口元がひきつる。
 短髪の、少し制服を着崩した姿。先日から少し嫌な関係にある、

「____た、拓真………」

 不敵な笑みを浮かべた、土赤拓真の姿があった。