思わず下唇を噛んで目線を下に落とした和寛の様子に「………何処か具合悪い?大丈夫?」と愛羅が声をかけてきた。

 ………………____いや、大丈夫。

 声に出そうとした瞬間に、がらがらっとドアを開けてはなぶし先生が入ってきた。
 愛羅は「……なんかあったら言ってね」という言葉を残して、彼女自身の席に座った。

「おっし!席替えすっぞ」

 はなぶし先生は教材の入ったかごを教卓に放るように置き、黒板にくるりと向くと、チョークで大きな座席表を書いた。

 数字をバラバラに書いていくと、学級委員長に籤の入った袋を渡す。
 学級委員長が順番に席を回り、籤を一人一枚ずつ引いていく。

「……………20」

 和寛が引いた籤を開くと、書かれていたのは2と0。20、20。前の黒板と番号を照らし合わせていく。

「………前から二番目、窓側………」

「……わ、私、14」

 愛羅がぼそっと呟く。14、14……………呟き、黒板を見れば、それは。

「……………ぼ、僕の前だ」

 よかった、離れなかった。

 このクラス内の友達がほぼいない愛羅とほぼずっと一緒にいたことで、作ろうと思えばいくらでもできたのだろう友達がほぼいない。
 微妙な距離感、愛羅と離れたら夏哉たちが寄っていくだけでなく、自分がクラスで孤立するところだった。

 嬉しさににやけそうになる顔を押さえて、喜びを噛み締める。