「…………___ふぅ、ただいま、和寛」

「あ、おかえり。弥生先輩、なんて?」

 少し疲れたように戻ってきた愛羅に、和寛は問いかける。

「………『愛ちゃんどう~?台詞覚えたかな、あ、あと和くんも』って。で、大体は大丈夫です、って言ったら『あっ、だったら、今日の午後から練習始めるから。和くんとりっちゃんによろしく』ってさ」

「……………愛羅弥生先輩の口マネ上手いね」

「でしょう。前に梨々香にも言われた」

 そう言って、愛羅はふんしと鼻息を荒げて腰に手を当て、もう片方の手でガッツポーズをしてみせた。
 和寛はそれにあははと笑ってから、ちらりと時計を見た。

「………どうしたの?」

「い、いや………………次、席替えだなぁ、って」

 とはいえ、愛羅にとってはなんてこともないことなのかもしれない。
 事実、きょとんとしている彼女は何も思うところもなかったようだ。

 和寛は自らの愛羅への想いと共に、先週、咲乃に言われた“お願い”も、喉に刺さった小骨のように気になって仕方がなかったのだ。