「……………___あ、和寛。もう来てたんだ?」

 聞き慣れた声に、和寛は我に返って振り向く。

 そこには、

「………や、やっぱり、さすがの和寛でも年相応の格好するんだね」

「そりゃあ………、ね。てか、愛羅もね」

 ピンクのブラウス、ピンクのシュフォンスカートに、白いカーディガン、薄ピンクのパンプスを身に付けた少女、愛羅がそこに立っていた。
 さらに白地にピンクのドットのハンドバッグ。
 長い髪は上に纏め上げて大きなお団子にし、ピンクレースのシュシュをつけている。
 これは更にイメージがなかったが、きちんとナチュラルメイクもしていて、首元にはストーンネックレスがキラリと光る。

 あれ、ピ、ピアス……………?

「…………?あ、あぁ、これ?マグネットピアス。穴開いてないから、勘違いしないでね」

「あ、そ、そうなんだ…………。ビックリしたぁ。愛羅が穴開けるなんて、って思った…………てかなんか愛羅、スッゴくおしゃれ。大人っぽい。下手すると、大学生にも見られそうな感じする」

 そうかな、と呟いて愛羅はへらりと笑う。
そして、急にちょっと真面目な顔になると、「そういえば、さっき言ってた和寛の相談って、何?」と訊ねてきた。

「あぁあ~……………、うん。午前中、夏哉と拓真に会ってきた。愛羅が…………クラスの女子に、悪口言われてる、って」

「あぁ、そんなこと。花絵ちゃん、千尋ちゃん、美南ちゃん、菜奈ちゃん、だよね。知ってる」

「え、えぇえっ!?」

 さも当然のように知ってると口にした愛羅に、和寛は吃驚した、ぐらいじゃ済まないほど目を剥いてみせた。

 そんな和寛の様子に愛羅は苦笑いを返して、
「…………そりゃあ、知ってるよ、嫌でも」
 と呟いた。

「あの子達、こっち見て聞こえよがしに言ってくるんだもの、嫌でも聞こえてくるから」

「…………………そうなんだ」

 拍子抜けした、とでも言わんばかりに視線が虚空に浮いている和寛に、愛羅は「それだけ?」と畳み掛けるように訊ねた。
 和寛ははっと我に返って、少し考える。

 言われていると気づいていても、愛羅はそこまで気にした風はない。
 隠しているだけなのかもしれないが、あれだけ何かあったら話を聞くと言ってきたのだ、本当に辛かったならこの話は夏哉達より先に愛羅から聞いていただろう。

 なら、あとは愛羅を巻き込むまでもない。