「………私ね、ずーっと、なんで学校なんてあるんだろう、って、考えてたの」

「……………うん」

「中高と“青春”とかいうけどさ、『人並みに青春したい!』なんて考えたところで、“人並み”って、全然青春してない。彼氏彼女作って楽しんでるのは“人並み”以上のホントにごく一部の人たち。“人並み”以下の、私みたいな部類の人なんて、全っ然。『まだ恵まれてる方よ』なんて言われたって、何も感じたりなんてしない。たとえ自分よりも恵まれてない例を示されたって、周りとの劣等感が薄れる訳じゃないもん」

 そう言って、愛羅は再び俯く。
 和寛は、愛羅の言葉を噛み締めるように目線を愛羅の足元に落とすと、何か自分に言える、言葉をかけようと顔を上げる。

「……じゃあ、諦めないで、これから目指していけばいい」

「…………………っ、」

「………僕にできることがあれば、なんでも言って?愛羅は、一人じゃないんだから。ぐるっとまるごと一人で抱え込んで、悩む必要なんて全く無いんだから」

 努めて、明るい声で言う。
 愛羅に分からないように一息を吐いて、ちらりと横を向けば、もう和寛の家はすぐそこだったが、和寛は愛羅を駅まで送ることにして気にせず歩き続ける。

「…………えへへ、和寛に助けてもらってばっかだね、私。情けない」

 笑みを含んだ声。
 でもそれよりも哀しみの色の方が強かった。

 言い終わって、洟を啜った愛羅に、和寛は何も言わずにぽんぽん、と頭を撫でた。