「___………お、やってるやってる。やっほー愛羅ちゃん梨々香ちゃん和寛くん?」

 後ろから夕陽を受け大きく手を振っている、黒い人影_____亜子が現れた。

 何か、片手に袋のようなものを、引っ提げているように見える。
 それからとんとんと座席の間の階段を降りながら、よっ、とかなんとか呟きながら舞台の方へと近づいていく。

「………よいしょっとぉ…………………はい、これ。差し入れ持ってきた。和寛くんさ、入ったばっかなのにホンット頑張ってるよね、やっぱスッゴいや!!」

「いや、全っ然。楽しいからさ。いきなり大きな役もらえたことには吃驚したけど、それでなんかやる気も出たし、自分の中ではやるべきことをやってるだけな気もするし」

 そう言ってしゃがんで、舞台の下で背伸びをして亜子が差し出した差し入れの袋を礼を言って受け取りながら、和寛は笑った。
 そして和寛は中身を見て「うわぁっ」と声を漏らした。

「最近ウワサの料理部のマドレーヌ!!あれ、亜子さんって料理部………」

「あたしのお友達が、料理部なんだ。頼んでみたら、快く作ってくれた。いっつもあたしに色々作ってくれる、料理上手な子だよ」

 そう言って亜子は微笑んで、「めっちゃ美味しいよ、それ」と呟いてから、舞台に手をついて飛び上がり、縁に座って和寛を笑顔で見上げた。

 和寛は袋の中身を愛羅、梨々香の順に見せてから、再び亜子の方へ向き直る。