台詞のレイアウトや色々なアレンジは逸樹と弥生が加えているとはいえ、自分が書いた物語の台詞を覚えるというのは少しくすぐったいものだ。
 秋祭の練習で多少慣れたとは言っても、変なくすぐったさは収まらない。

「…………なんか、気持ち悪い………。変な感じ」

「え?なん…………………あ、そっか。これ愛羅が書いたお話だったよね」

 ぺらぺらとあっちとこっちのページを交互に見て、和寛は愛羅に同情して苦笑いをする。

 でもその表情を揉み消して真剣な表情になると、自分の台詞とその前後の台詞に目を通していく。動作の部分も目を通して、ページを捲っていく。
 一度に覚えるのは無理と判断した和寛のやり方で、一度ずつ目を通すことを何セットも行うのだ。

「……愛羅は、どうやって台詞覚えんの?」

「え?あ~っと、一ページずつ、かな」

「そんなんで覚えられるんだ!あ、そっか。愛羅、頭良いもんね」

 頭良くないよ、とむすっとした表情で愛羅が溢す。
 ははっと笑った和寛の表情は、愛羅も梨々香も中学の頃から知っている和寛の頃の面影が残っていた。