「…………何笑ってんの」

「だぁってさぁ、愛羅中学生の頃から全っ然変わってないからさ、何か笑えてきちゃって。ねぇ愛羅、中二の頃一回だけ隣同士の席になったの覚えてる?」

 その和寛の問いを聞いて、愛羅は少し考えてから「うん」と洩らす。
 そして和寛は「愛羅、覚えててくれたんだね」と朗らかな笑顔を溢した。

「…………愛羅はさ、理科の実験だって、技術家庭の実習だって、部活だって、何でも真剣で、皆が憧れてるような子だった。でさ、愛羅、あるとき言ったよね。『私は頑張り屋なんかじゃない。むしろ面倒臭がり屋なんだから』って。『やらなければならないことをちまちまとやってるだけだから、私』ってね」

「……………そんなこと言ったっけ。覚えてないや」

 和寛の話を聞いて、愛羅は口元に右手を当てて目線を落とした。
「………うわ」と洩れた梨々香の言葉により、自分で『愛羅のことをずっと見ていた』ことを話してしまった和寛は「ま、まぁ、いいじゃん」と誤魔化した。

「ふ、二人は、あっちから電車通学?」

「うん、私たちが通ってた中学校の最寄り駅で降りて、そこからチャリンコ」

「そっか。僕ん家はそこの駅のすぐ側」

 そう言って和寛は駅の方向を指差す。