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母の死 以来、
僕の心が再び闇に閉ざされたのは、
結婚から3年が過ぎた頃だった。
予定より1日早く終わった仕事の出張。
妻が待つ自宅へ帰り、玄関の扉を開けると目に入った見知らぬスニーカー。
玄関にまで聞こえる妻の喘ぎ声。
直後、「なんか音しねぇ?」と発する男の声。
頭が真っ白になりかけながら歩を進めた寝室。
そこで見た悪夢。
四つん這いになった妻と、
後ろから腰を振る見知らぬ男。
「なに・・・やってるの・・・?」
出会った中学時代、
彼女の県外への進学に伴い、
離ればなれになった高校時代、
僕も追いかけるように進路を決め、
再会叶った大学時代。
お風呂に入る時も、
僕との夜の時も、どんな時も。
僕が知っているのはいつも眼鏡をしていた妻。
だけどその時ばかりは、
眼鏡を外し、髪を乱し、恍惚の表情で淫らに男を受け入れていた、
僕の知らない妻がそこにいた。
その瞬間から、僕が知っていたはずの妻は知らない他人になっていた。



