正義が悪に負ける時



「あ!キコさん、お孫さん来てくれたんですね!良かったぁ。」


祖母とゆっくり話をしていると、
一人の女性看護師が入ってきた。



祖母の腕につけられた点滴の様子を見てから、僕の目を見るその女性。


「里田フユミです。

今日からキコさんの担当になりますのでよろしくお願いします。」



それがフユミとの出会いだった。


この時の僕は、すぐに目を逸らした。


故郷へ帰ってきて何年も過ぎていたが、時間の経過と共に心の闇が晴れるわけでもなく、

人間不信・・いや女性不信はまだこの時も治っていなかった。


仕事でもプライベートでも、
女性の目を見るのが怖かった。


その瞳を見ると、前妻との過去が蘇り、
炎のように僕を包む。


そんな感覚に陥っては全身が震えてしまった。