「あの子」の事は誰も理解できない。それは誰もが理解出来る事実だった。



「え?「あの子」の事を知りたい?やめた方がいいよ。」



誰もがそう即答するのだ。



「そうそう、あんまり関わらない方かいいと思う。」



「あの子」のクラスメイトは皆、眉間にシワを寄せながら語る。



「「あの子」はね、誰にも理解されないし、理解できないの。」


「あの子」は特別だ。他とはまったく違う。それは皆が理解しているようだった。


「「あの子」の事を知っても何もいい事ないよ。」


美しく、そして、狂気。


「あの子」にはこの世のルールが通用しない。


誰がなんと言おうと、誰が死のうと、誰が何をしようと、「あの子」にルールは通用しない。


「「あの子」は狂ってる…」


「あの子」のクラスメイトは泣きながら言った。


「もうね、「あの子」の周りはぐっちゃぐちゃだよ!あははっ」


「あの子」に対するぶつけようのない怒り。


抑えようのない、憎しみ。


そして、


愛。


狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる。


「本当はね、「あの子」に悪意なんてひとつも無いんだよ。本当は皆それに気づいてるよ。」


微笑みながら言う天使。


知りたいの?「あの子」のことを。


決して触れられない、触れてはいけない「あの子」のことを。


「あんたにそんな勇気があるの?」


知りたい。「あの子」を。


「あの子」の生まれた意味と、「あの子」の宿命、「あの子」の頭の中を。


「「あの子」はね、本当は……」