「私、ただの病気じゃないの」
「どういうこと?」
「…それは」
自分から言い出したことなのに、言いづらい。でも、言わなきゃ。
「難病なの、私」
「え……」
彼は絶句した。誰でもそうだと思う。
大好きな人が、難病になるだなんて誰も予想していないだろうし。
さすがの彼も、私が難病だとは夢にも思わなかっただろう。
「嘘だろ…?」
「ほんとよ」
「難病……」
彼は悩ましい顔をしていた。
「そうか」
彼はきっと、私から離れる。
きっとー

「辛かったな」
優しい声とともに、彼が再び強くだきしめてきた。
「ひろくん…?」
「ん?どうした?」
どうして、そんなに優しくするの?
難病の私のことなんかー
「どうして…」
「一人で悩んで、辛かったよな。ごめん」
「謝らないで。ひろくんが悪いわけじゃない」
「心愛ちゃんが悪い訳でもない」
「私が悪いの。難病の私が」
「誰も悪くないんだよ。あの子達も、心愛ちゃんも」
彼が私の頭を優しく撫でた。

「二年もの間、ずっと苦しんできたんだな」
「もう、慣れちゃった」
私が笑うと、彼は私の頬を撫でるように触れた。
「無理、するな。慣れる訳ないだろう」
「大丈夫、だから」
「大丈夫じゃないだろ?今の心愛ちゃんに必要なのは、強がることじゃない。僕に甘えること。全てを僕に話すこと。病気とは上手く付き合うしかないだろうけど…できる限りの事はするから」
「ひ、ろくっ…」
私は我慢できずに泣いた。
彼の前では泣きたくなかったけれど、
涙が勝手に溢れてくる。
「心愛ちゃん…」
彼が優しく涙を拭ってくれた。
彼は私を少しの間見つめたあと、
私の背中に手を添え、優しく抱きしめた。

「どうして欲しい?」
「…もう少し…このままでいても、いい?」私は涙声で言った。
「もちろん。いつまでも、こうしてよっか」
「それは困る。だって、ちょっと冷えてきた」
「嘘だろ?まだ暖かい」
「誰かに見られたら困る」
「大丈夫だって」
「うん…」
私は彼に身を預けた。
彼を好きになってよかった。
こんなに幸せな時間を過ごしたことなんて今まで一度もなかった。
神様、ひろくんに会わせてくれてありがとう。私、今すごく幸せです。
私、もう離れない。彼とずっと一緒にいる。
彼に出逢えて、本当によかった。