希望の夢路

「大丈夫?ひろくん」
私が彼に近寄り触れようとするのを見て、楊香が彼に抱きついた。
「おっと」
彼は楊香を抱き留め、心なしかー
「鼻の下のばしてる」
男の人はすぐ綺麗な人にこんな情けない顔をする。
それが嫌だ、と思っても仕方がない。
私がどうこう言える立場じゃないし、そこはもう、諦めてる。
「い、いや、の、伸ばしてなんかない」
呆れかえる私に、彼が言った。
「照れちゃって。可愛いじゃない」
楊香は艶っぽい笑みを浮かべた。
「照れてなんて…」
彼は私を一瞥したが、私は知らないふりをした。
「ごめんね、心愛ちゃん。うちの楊香が、ご迷惑をおかけして」
あなたが謝ることじゃないよ、魁利。
悪いのは全部、楊香だ。
一番腹立たしいのは、彼を誘惑しているということ。
私の前でよくも…。

「ねえ、魁利」
「何?心愛ちゃん」
「何で魁利と楊香は私を選んだの?」
「心愛ちゃん?」
彼が、私の隣に移動した。
私に取られまいと、楊香は彼の腕を離さずにいた。
「やっぱり、住みやすかったから?」
「そうよ。住み心地サイコ―」
「こら、楊香!なんてこと言うの!」
「だって、本当のことじゃん」
「謝りなさい、楊香!」
「やだやだ!」
楊香は駄々をこねた。
「わがまま言わないの!住まわせてもらってるだけでも感謝しなさい!」
「ふん。なによ。別に心愛のとこじゃなくてもよかったし」
「楊香!」
「はいはい。悪かったって」
楊香はふて腐れてしゃがみこみ、緑の地面を撫でた。
「ごめん、心愛ちゃん。楊香はこんな性格だから素直になれないの」
「いいよ、わかってる」
「ありがとう、そう言ってくれると助かる」
魁利は溜息をついた。
「あのさ、さっぱりわからないんだけど」
彼が私に言った。
「住まわせてもらってるだとか、住みやすいだとか…」
「私から言うね」
魁利が深呼吸してから言った。