希望の夢路

「ひろくんのどこが好き?」
私は楊香に尋ねた。
「は?全部に決まってんでしょ?」
「え、いや、うん…」
楊香の棘のある言葉には、未だに慣れない。というより、怖い。
「博人の彼女の癖に、なんでそんなこと聞くのよ」
「いや、ひろくんのこと、どう思ってるのかなあって、気になって」
「へえ〜?」
楊香の挑発的な顔を見て、また溜息が漏れる。もし楊香が人間で、ひろくんと出会っていたら多分、ひろくんは楊香を選ぶのかもしれない、と思った。
ああ、楊香が人間じゃなくてよかった。と、つくづく不謹慎ながらも安堵した自分がいる。
「あーあ、私がこんなじゃなかったら博人のことメロメロにできたし付き合えたのに」
そうだね。自分に自信しかないから、そんな言葉がするすると出てくるんだよね。逆に羨ましい。私だって自分に自信を持ちたい。けど、持てないという悪循環。どうにかしてこの悪循環から抜け出したいけど、なかなか脱出できないのが今の私。
情けない。

「強いて言うなら、すごく優しいところ。優しくって〜頭良くって〜イケメンで」
「うん」
「変態なところ♡」
「うん…って、ええええええー!?」
私は勢いよく楊香を見つめた。
「何よ、気持ち悪い。そんな見ないでよ。博人に見つめられるなら嬉しいけど、心愛じゃ、やだ」
楊香は、ふん、と言いながら顔を背けた。

「変態なところ…」
私は、楊香の言葉にノックアウトされそうになったが、なんとか持ちこたえた。でも、待って。
変態なところって…って、なんで彼女の私よりも楊香の方が知ってるのよ。
「心愛ちゃん!話、話!」
「え?話?」
「そ。だいぶ話、逸れちゃったよ」
「あ、そうだった!」
そうだよ。私はひろくんの変態について考えている場合じゃなかった。
危ない危ない。
楊香の言葉に、惑わされるところだった。