希望の夢路

「自分の命の期限が僅かだと知ったら、魁利と楊香は何をしたい?」
「えー、そんなのわかんないよ。そうなってみないとさあ。僅かだと知ったら、って言われても実感がないからわかんない」
楊香は口を尖らせた。
「魁利は?」
「私も、楊香と同じ意見かな」
「ほらみろ!」
「こら、楊香!」
「なによー」
「女の子なんだから、そんな言い方するのやめなさい。はしたない」
ばっさりと斬られた楊香は、しゅんとして俯いた。
「でも、もし自分の命の期限が決まってしまっていたとしたら、私は好きなことをしたい」
「好きなこと?」
魁利は時折、意味深なことを平然とした顔で言うから驚くこともしばしば。
魁利はどういう思いで私の言葉を聞いているのだろうと、気になっている。
それにしても、魁利の好きなことって何だろう。

「いろんなところへ行ったり、うーん、絵を書いたり…心愛ちゃんと遊んだり!」
魁利は大きな目で私を見て微笑んだ。
そうか、魁利はいろんなところへ行きたいんだね。美術館が好きだったりして。
魁利って、絵が好きなのか…。
初めて知った。
今まで絵を描いてたところなんて
一度も見たことはなかったし、
絵が好きだなんて初耳。
魁利は一体どんな絵を描くんだろう。
見てみたいな。
それにしても、私と遊びたいのね、
魁利。ああ、本当にいい子だ。
毎日癒されてるよ、魁利。
ありがとう。

「心愛なんかと遊びたくなーい」
可愛い顔して意地の悪いことを
べらべらと…。悪魔だ。
この子は、小さな悪魔だ…。
魁利とは正反対のこの子、
私の一番苦手なタイプなんだけど。
全ての元凶は、もしやこの子なのでは?
この子がもし人間だったら、間違いなく避ける。速攻で避けてる。
でも、共生してるから避けようがない。仕方ない。ああ、酷だ…。
「でも、私も好きなことしたい。命の期限が決まってるんなら、仕方ないから好きなことする。後悔して生きるより、楽しかったって思って死にたいもん。どうせ死ぬんなら、ね」
最もだ。楊香の言うことは最もだ。
一体大人なのか子供なのかよくわからないな。大人と子供の中間か?
微妙だな。