それから毎日夜に二人は現れるようになった。
 二人との共同生活に少し慣れた頃、
 寝室のベッドに入り寝ようとしていると不意に背後から気配がした。
 と同時に、聞き覚えのある声が降ってきた。
 またあの二人だ。
「こんばんは~」
 この柔らかな声は魁利だ。
「あーあ、暇~」
 そしてこの天邪鬼、楊香。
 私は二人に構わず、ベッドに潜り込んだ。
「ねー、心愛ちゃん!お話しよ!」
 魁利が私の傍に来た。
「何か話してよ。暇なんだけど」
 楊香は私に対してだけ、不機嫌だ。
「何かって言われても」
 私は溜息をついた。

「もう二年経つんだね」
 魁利がぽつりと呟いた。
「そっか、もう二年…」
 私は天井を見上げた。
「二年経ったご感想は?」
 楊香がくくく、と喉を鳴らした。
「相変わらず、嫌な言い方するね」
「で?どうなの?」
 楊香はわたしのベッドに腰掛け、私を見た。
「どうって言われてもなあ。二年って意外とあっという間だなあとは思うけど」
「確かに。二年経った感じ、しないよね」
 魁利が考え込むように顎に手を当てていると、楊香が呆れたように言った。
「もう二年なの?いつまでこいつと一緒にいればいいんだよ」
「ちょっと、楊香!」
 魁利が怖い顔をして、楊香の耳を引っ張った。

「いたたたた…!何すんのよ!」
 楊香が魁利の手を払いのけた。
「黙ってたらいっつもそうやって調子乗って!いい加減にしなさい!」
 仏の顔も三度までという言葉があるように、普段大人しい魁利が怒ると流石に怖い。
 姉に叱られた妹は、しゅんとしてしばらく黙っていたが、静かに呟いた。
「…ごめん、心愛」
「楊香…いいよ。ごめんね、こんな私で」
 楊香は黙って床を見つめていた。
「ううん、私が悪いし。心愛がいなかったら、私達生きていけないんだから。
 心愛は私達の命の恩人だよね」
 楊香は何かを噛みしめるように、ぎゅっとワンピースの生地を握った。
「そうよ。少しは反省しなさい!主に酷いこと言っちゃだめよ」
「努力する。でも、抑えきれなかったらごめん」
 楊香が私に頭を下げた。
 やけに素直だ、と少し不気味に思ったのは心の内に秘めておこう。