「ひろくんは、イケメンですごくかっこよくて」
「なるほど?」
「シゲくんみたいに…」
「重幸にそんなに似てる?」
「うん。結構、似てる」
「そうかな?…って、もしかして、見た目が重幸に似てるから好きになった、ってわけじゃないよな?」
「違うよ。そんなんじゃない」
「よかった」
「真面目でとても優しくて…」
「そこも似てると」

「うーん、確かに似てるけど…シゲくんにはシゲくんの良さがあって、
ひろくんにはひろくんの良さがあるの」
「はあ…結局僕は、重幸には勝てないんだな」
僕は溜息をついた。
「違うの、そうじゃなくて」
「いいんだよ、もう」
「ひろくん、怒ってる?」
「怒ってないよ」
「ううん、怒ってる」
「怒ってないって」
「お願い…怒らないで」
彼女は僕の手を握った。
「怒ってない」
僕は彼女の手を握り返した。
「本当に?」
「うん」
「あのね、ひろくんはとっても逞しくて…ほら、こんなに…」
彼女は僕の腕に触れて言った。
「ひろくんに抱き締められると、すごくどきどきするの。男の人を感じちゃう…」
「僕を誘ってるのか」
「…?」
彼女は首を傾げた。
僕の言っている意味が、理解できていないようだ。
「ひろくん…?それって、どういうこと…?」
「…こういうこと」
僕は彼女を再び壁に押し付け、彼女の頬に両手を添え、唇を強く吸った。
「んっ…」
彼女は僕から逃れようと身をよじったが、僕は彼女を離さなかった。
「もうっ…ひろくんったら」
彼女は、自分の唇を指で押さえた。
「…僕を誘惑した心愛ちゃんが悪い」
「そんな…私、そんなことしてない」
拗ねた彼女も、可愛い。彼女には『可愛い』が溢れている。

「ほーら、続き。心愛ちゃんが思う、僕の好きなところ」
「あっ…うん。ひろくん、優しいけど意地悪なところがあるでしょ?
そこも、好き。でも、意地悪ばかりしちゃ嫌。」
「…わかったよ。ほどほどにする」
僕は彼女の髪を撫でた。
彼女は気持ちよさそうに目を細めた。
「結論。私は、ひろくんの全てがだーいすき。」
「…困ったな」
「えっ…?」
彼女は戸惑った。
「…理性を崩した心愛ちゃんが悪い」
「えっ?ちょっと待っー」
僕は彼女の唇を塞いだ。優しく、強く。
「んう、もうっ…!ひろくん、キスばっかり…」
「…僕がキス魔だってこと、忘れてた?」
「うん…」
「忘れないように、何回もしなきゃだめだな」
「もう今日はだめ…!今日はもうこれ以上、だめ」
「なんで?」
「だって…。わかるでしょ?もう、ひろくんの意地悪」
「ごめんごめん。…今日はこれくらいにしとく」
「うん、そうして」

―やっぱり、我慢できない。

「…いや、前言撤回。我慢できない」
僕は再び、彼女の唇を吸った。彼女に聞こえるように、わざとリップ音を響かせながら。