希望の夢路

「えっ?嘘…?」
「だから、あなたが博人に本音を言って甘えるように仕向けるには、
こういう方法が一番良いと思ったの。だからよ、あんなこと言ったの。
ああでも言わないと、来ないでしょ。」
「じゃあ…博人さんのことは…」
「何とも思ってないわよ。安心して」
「よかったあ…」
心愛は安堵の溜息を漏らし、博人の胸に擦り寄った。
「博人さんがいないと私、生きていけない」
「僕だってそうだよ、心愛ちゃん」
「嬉しい…」
心愛は博人を見つめて言った。
「私、博人さんの全てが好き。特にね、頭脳明晰でかっこよくて、
とっても優しいところが大好きなの。博人さんの優しいところが…大好き」
「心愛ちゃん…嬉しいな…」
博人は、我慢できずに心愛の顔を両手で包み、唇を塞いだ。
触れるだけの、優しい口付けだった。
「ひ、ろとさん…」
心愛は、博人の温もりが残る唇に指で触れ、幸せを噛みしめていた。
「ねえ、心愛ちゃん。嫌じゃなかったら、もう一回、いいかな?」
心愛の答えは、もう決まっていた。
「博人さん…はやく…ちゅー、して…」
心愛は静かに目を閉じた。
博人の唇と心愛の唇が、優しく重なる。
二人の口付けは、なかなか終わらなかった。

「そんな見せつけられちゃ…へこむなあ…。私の、片想い、か…」

保乃果の独り言は、二人には届かなかった。
保乃果は、寂しげに笑った。