―へえ、こんな綺麗な風景がこの世にはあるのか…

悪いとは思いつつも、彼女が見ている本のページを思わず見てしまった。
彼女が見惚れているそのページの写真に、僕は釘付けになった。
「綺麗な風景だな」
思わず、心の声が漏れてしまった。
すると、彼女は驚いて僕を見た。
「あ…さっきの…」
彼女はぺこりと頭を下げた。
「ああ、ごめんなさい。…綺麗だなと思ってつい。じっと見てしまって、ごめんなさい。
どうぞ、僕のことは気にせず、読んでください」
僕は、本を読もうと本を開いた。
「あの…」
とても柔らかい声が僕を呼んだ。
「ん?はい、何ですか?」
「さっき、この本、手に取ろうとなさってましたよね…やっぱり…気になりますか…?」
彼女は僕を見て言った。
「ああ、いや、そんなことないですよ」
興味は、あった。星空は好きだし、星空の視写真を見てみたい。
しかし、先に手に取ったのは彼女だ。彼女には先に読む権利がある。
「あの…もし良かったらなんですけど…一緒に、読みませんか?」
彼女の思いがけない提案に、僕は驚きを隠せなかった。
まさか、そんな言葉が彼女の口から出るとは思いもしなかった。
「いや、でも…」
僕は躊躇った。本当に、良いのだろうか。見ず知らずの僕と、一緒に本を読むなんて。
「良かったら、なんですけど…。嫌ですよね、ごめんなさい」
彼女は目を伏せた。
「嫌だなんて、僕は一言も言ってないですよ。貴女さえ良ければ、ぜひ一緒に」
「本当ですか…?わあ、よかった…!」
彼女の顔がぱあっと明るくなった。
僕に笑顔を向けるその姿は、まるで太陽を向く向日葵のようだった。