「心愛ちゃん、ねえってば」
僕が彼女を優しく揺すっても、なかなか顔を上げてくれない。
可愛い顔が、見えない。
そんなの、嫌だ。
「心愛ちゃんってば。呆れてないよ、僕は」
「…」
彼女は無言を貫き通す。
「ごめん、そんなつもりじゃなくてね」
「じゃあ、どういうつもりなの」
彼女はテーブルに突っ伏したまま、籠った声で聞いた。
「んー、だからその…」
「可愛げがないって思ったんでしょ?」
彼女はふと顔を上げ、僕をじっと見た。
「そんなこと言ってないじゃないか」
「…もういい。何もいらない」
彼女はまた、テーブルに顔をくっつけた。
ああ、またすれ違っている。どうしてこうなっちゃうんだろう。
悶々としている僕に助け舟を出してくれたのは、マスターだった。
「まあまあ。落ち着いて」
そう言って彼女の目の前に置かれたのは、
温かな湯気を出している白い液体が入ったカップだった。
彼女が、マスターの声に顔を上げた。
「これは?」
彼女がマスターに尋ねた。
「何でしょう?」
マスターは笑っていた。
「いただきます…」
「召し上がれ」
一口彼女がその液体を飲んだ瞬間、彼女は声を上げた。
「あ!ホットミルク!美味しい…」
「ホットミルク?」
どれどれ、と僕は彼女が口をつけたカップに手を伸ばしホットミルクを口に流し込んだ。
その時に、彼女が目を見開いて顔を真っ赤にしていたことは、
目の前の僕とマスターだけが知っている。
「ひろくん…!」
彼女の顔がみるみるうちに口紅色に染まる。
真っ赤じゃないか、ものすごく。
「ど、どどどっど、どうして…」
彼女は慌てふためいている。そう、目の前の彼女は頭から湯気を出して…
ーん?湯気を出して?
「うう~」
彼女はポットのように湯気を出した頭を僕の胸に押し付けた。
「心愛ちゃん?大丈夫?心愛ちゃん?」
僕は彼女を顔を見た。真っ赤。
「しっかりしてよ」
「だって…ひろくと、間接キス…」
「何だよ、今更。今まで何度もキスしてるだろ?間接キスごときで…」
「ぬう…」
彼女は僕の胸から離れない。
―待てよ、『ぬう』ってなんだよ?『ぬう』って…。
「参ったなあ、もう」
僕は笑いながらも、満更ではなかった。
大好きだ、心愛ちゃん。
改めて、そう思う。日に日に、彼女への思いが強くなる。
「心愛ちゃん」
そう言って、僕は彼女を胸から引きはがそうとしたが、
「もう少しだけ」
と言って甘える彼女に、
「仕方ないなあ」
と呟いて、僕は彼女を抱き締めた。
「覚めちゃうよ、美味しいホットミルク」
「いいの、そのくらいがちょうどいい」
「だめ。僕との恋を覚ますつもりか」
「違う。ホットミルクの話でしょ?どうしてそうなるの?」
「だって…覚ますんだろ?」
「覚まさないもん!ずっとアツアツだもん、私達…」
言っている途中で恥ずかしくなったのか、彼女は僕の胸にぎゅっとしがみついた。
「…そうだね。アツアツだよね、僕たち」
「うん!」
僕と彼女は笑い合い、ホットミルクを美味しそうにごくごくと飲んでいた彼女の手を、
強く強く、握りしめた。
僕が彼女を優しく揺すっても、なかなか顔を上げてくれない。
可愛い顔が、見えない。
そんなの、嫌だ。
「心愛ちゃんってば。呆れてないよ、僕は」
「…」
彼女は無言を貫き通す。
「ごめん、そんなつもりじゃなくてね」
「じゃあ、どういうつもりなの」
彼女はテーブルに突っ伏したまま、籠った声で聞いた。
「んー、だからその…」
「可愛げがないって思ったんでしょ?」
彼女はふと顔を上げ、僕をじっと見た。
「そんなこと言ってないじゃないか」
「…もういい。何もいらない」
彼女はまた、テーブルに顔をくっつけた。
ああ、またすれ違っている。どうしてこうなっちゃうんだろう。
悶々としている僕に助け舟を出してくれたのは、マスターだった。
「まあまあ。落ち着いて」
そう言って彼女の目の前に置かれたのは、
温かな湯気を出している白い液体が入ったカップだった。
彼女が、マスターの声に顔を上げた。
「これは?」
彼女がマスターに尋ねた。
「何でしょう?」
マスターは笑っていた。
「いただきます…」
「召し上がれ」
一口彼女がその液体を飲んだ瞬間、彼女は声を上げた。
「あ!ホットミルク!美味しい…」
「ホットミルク?」
どれどれ、と僕は彼女が口をつけたカップに手を伸ばしホットミルクを口に流し込んだ。
その時に、彼女が目を見開いて顔を真っ赤にしていたことは、
目の前の僕とマスターだけが知っている。
「ひろくん…!」
彼女の顔がみるみるうちに口紅色に染まる。
真っ赤じゃないか、ものすごく。
「ど、どどどっど、どうして…」
彼女は慌てふためいている。そう、目の前の彼女は頭から湯気を出して…
ーん?湯気を出して?
「うう~」
彼女はポットのように湯気を出した頭を僕の胸に押し付けた。
「心愛ちゃん?大丈夫?心愛ちゃん?」
僕は彼女を顔を見た。真っ赤。
「しっかりしてよ」
「だって…ひろくと、間接キス…」
「何だよ、今更。今まで何度もキスしてるだろ?間接キスごときで…」
「ぬう…」
彼女は僕の胸から離れない。
―待てよ、『ぬう』ってなんだよ?『ぬう』って…。
「参ったなあ、もう」
僕は笑いながらも、満更ではなかった。
大好きだ、心愛ちゃん。
改めて、そう思う。日に日に、彼女への思いが強くなる。
「心愛ちゃん」
そう言って、僕は彼女を胸から引きはがそうとしたが、
「もう少しだけ」
と言って甘える彼女に、
「仕方ないなあ」
と呟いて、僕は彼女を抱き締めた。
「覚めちゃうよ、美味しいホットミルク」
「いいの、そのくらいがちょうどいい」
「だめ。僕との恋を覚ますつもりか」
「違う。ホットミルクの話でしょ?どうしてそうなるの?」
「だって…覚ますんだろ?」
「覚まさないもん!ずっとアツアツだもん、私達…」
言っている途中で恥ずかしくなったのか、彼女は僕の胸にぎゅっとしがみついた。
「…そうだね。アツアツだよね、僕たち」
「うん!」
僕と彼女は笑い合い、ホットミルクを美味しそうにごくごくと飲んでいた彼女の手を、
強く強く、握りしめた。

