僕は彼女に提案をした。
「心愛ちゃん、外に出ようよ」
「…っ、」
彼女は怯えたように体を震わせた。
あの事件以来、彼女は外に出るのがとても怖いらしい。

被害者である彼女のもとに警察が来て事情聴取をされて全貌が明らかになった。
道を進んでいこうと点字を辿って歩いていた彼女は、彼女の行く手を阻むように立ち塞がる三人組の女性に難癖をつけられて絡まれた。
そして、彼女の持っていた杖を取り上げられ、放り投げられた彼女は、自分の杖がどこにあるのか手で探していた。しかしすぐに鋭い痛みが走った。

「あーら?ごめんなさーい?ごみかと思って間違えて踏んじゃったわ」
一人目の女性が、彼女の手をハイヒールで思いっきり踏みつけた。
「い、たい……」
「痛いでしょう?私もいたかったのよお!!」
一人目の女性が杖を探していた彼女の左手を、さらにぐっと踏みつけた。
「やめて……いたい……」
「これでわかった?障害者め」
二人目の女性が叫んだ。
「まずさ、目が見えないくせに、何その格好。ワンピースにヒール?あはははは!…笑わせんじゃないわよ!
目の見えないやつは目の見えないやつらしく、ボロい格好でもしてなって」
三人目の女性も、容赦ない言葉を彼女に投げかけたという。
「大人しく引きこもってろよ、家に」
「目見えないくせにオシャレなんかしやがって」
さんざん酷いことを言われた挙句、彼女は右足首を踏みつけられた。
「痛いよ……やめてください…」
「誰がやめるか。二度と外に出てくんな!」
彼女の言い分は聞き入れられず、彼女の左足首も踏みつけられ、少しして左足首は開放されたが今度は右腕をヒールで突き刺された。

「いたいよ…いたい……」

目が見えないから、動こうにも
動けなかった彼女に暴行していた三人組。痛くて動けない彼女をいいことに、踏みつけられた足に何度も鋭い痛みが走った。
「ふん、ざまあ」
彼女は次第に、意識を手放した。
その後のことは覚えておらず、
気がついたら僕の家のベッドにいたということを話した。
「なんて酷いことを…」
僕は絶句した。
「ありがとうございました」
警察は頭を下げ帰っていった。
彼女は、力が抜けてしまったのか
その場に座り込んでしまった。
「大丈夫?」
「なんか…力が抜けて」
「よし、少し…寝ようか」
「でも」
「心愛ちゃんとお昼寝」
楽しいな〜、と僕が言うと
彼女はふふ、と笑った。
彼女はまだ外に出たがらないけど、
彼女の不安が払拭されたら
一緒に買い物に行こう。
なんなら、遥香と保乃果と買い物に行ってもいいだろうし。
でも、僕は君にぴったりとくっついて
君の手となり足となるからね。
嫌だなんて、言わないでよ?