希望の夢路

「もういいですよ。30分経ちました」
「あ、はい…」
僕はガーゼから手を離した。
多川はガーゼを取って、包帯を巻いた。
「左手が1番、傷が深いんです」
「えっ?でも傷はそんなに深くないって」
「ええ。左足首、右足首、右腕に比べれば」
「そんな…」
「左手、右腕、左足首、右足首の順です」
「1番悪いのが左手で…1番良いのは右足首…」
「ええ。でも大丈夫ですよ。日常生活に支障は来たしません。怪我もすぐに治るでしょう」
「本当ですか!?」
僕は思わず前のめりになった。
「ええ。ですが、左手と右腕の治癒には少し時間がかかります」
「あっ、はい…」
「骨にも異常はありませんが、怪我が軽いと思って油断してはいけません」
「はい…」
「大切に完治まで経過観察しなければいけませんよ」
「はい、わかりました…」
僕は彼女を見た。
今にも目を開けて話し出しそうな君。
でも、なかなか起きてはくれない。

ところで、と多川が咳払いした。
「先程の話ですが」
「先程の話?」
「ええ、望月さんにはあなたが必要不可欠だということです」
「ああ、はい…」
「いつから目が不自由になられたんですか、望月さんは」
「最近です。最近といっても…1年くらい経ちますが」
「そうですか」
多川は溜息をついて僕を見た。
「異常はないといっても、恐らく疲れは溜まっていると思います」
「疲労…」
「ええ。睡眠はしっかり取らせるようにしてください」
「はい…」
「あと、望月さんは気を使っている分、疲れやすいんだと思います。虚弱体質だから尚更疲れやすいかと」
「確かに、気を使っているところはあると思います」
「それだけですか?」
「それだけ、と仰いますと」
「あなたに迷惑をかけまいと、ずっと気を使って疲労が溜まった結果、こうなったという可能性は十分にあります」

僕のせいだと、この救急隊員は責めたいのだろうか。確かに、僕のせいだとは思う。でも、そんなに強い物言いで責めなくてもいいじゃないか。

僕が不服そうな顔をすると、多川が溜息をつきながら言った。
「呼んでたんですよ」
「え?」
「助けて、ひろくん、って。恐らく、あなたのことでしょう」
「僕のことを…」
「あなたのことを信頼していて、ずっとあなたのことだけを考えていたのでしょう。そんな望月さんをあなたは、しっかりと支えきれていない」
なぜこんなことを、知り合いでもない他人に言われなければならないんだ。

いくら救急隊員とはいえ、
もう我慢の限界だ。