「暖色系の明るい色だね、オレンジと黄色って」
彼女が、絵を見て目を細めながら言った。
「うん、そうだね」
「見てるだけで和むっていうか…和む、とはちょっと意味が違ってくるかもしれないけど…
うーん、なんていうのかな…。暖色系の色を見ていると、心がぽかぽかする、じゃないけど、
なんかこう、暖まる感じ、ない?」
「あるある。オレンジもそうだけど、黄色は特に、明るくて眩しい色だよね。太陽の色、みたいな」
僕の太陽を縁取る暖かで眩しい色―黄色だ。
そしてその眩しい黄色の柔らかなオーラを放つのは、まさしく君だ、心愛ちゃん。
「そうそう、まさしく太陽の色!なんかね、黄色とかオレンジって、希望の色みたいじゃない?
希望の光みたいなイメージカラーというか」

そうだよ、まさしく、君は希望の光のイメージカラーを纏った、僕の太陽なんだよ。
君は僕の、希望。
「うんうん。希望の光って、黄色ってイメージだよね。逆に黄色意外、希望の光には当てはまらないって感じ」
「どうやったらこんな暖かみのある色を出せるんだろう」
「確かに」
「ねえ、さっきからひろくん、確かに、ばっかり言ってる」
「えっ、そうかな?」
「うん、そればっかり」
彼女は笑っていた。
「黄色とオレンジだけで描いてるんだよね。きっと、これ」
彼女がドット柄を見て言った。
「そうかもな。わかんないけど」
「もしかしたら、他の色も混ぜてるかも」
「えっ、そうなの?」
僕が彼女を見ると、彼女は考え込んでいた。
「そうなの?って、わかんないよ。美術に詳しくないし」
「なんだ」
「なんだ、ってなに?ひどーい!」
彼女は頬を膨らませた。
「ごめんごめん。でも、黄色とオレンジだけでこれだけの絵を描いているとしたら、すごいよな」
「うん、すごい」
僕は彼女と、暖色のドット柄を見上げた。画家の名前は知らないものだった。
素人ながら失礼なことを言うが、恐らく無名の画家だろう。
「やっぱりすごいなあ」
「すごいって?」
「芸術家って、こんなにすごい、人を惹きつけるかのような何かを創れるって、すごいなって」
「僕もそう思うよ。芸術家って別世界に住んでる人、って感じがするんだよね。特別感が漂ってる、みたいな」
「うん、何故か惹きつけられちゃう」
「あっ、心愛ちゃん!こっちにもあるよ、ドット柄」
「え…?あ!本当だ」