だんだんと、心愛の声が遠のいていく。
ただでさえか細いのに、次第に弱まっていく声。


「わ、たし…ほのちゃんと友達になれて、よかった…」
「何言ってるのよ。しっかりしてよ」
「ひろとさんに…伝えて。わたし…ひろとさんに会えて、
ひろとさんのことを好きになってよかったって…
ありがとうって…」
「ちょっと、まるで別れのあいさつじゃないの。やめてよ。博人と別れるなんて、
私、絶対に許さないから」保乃果は力強く言った。
「ほの、ちゃん…」
「いい?別れちゃだめ」
「でも…わたし…めいわく…」
「こら。さっきから、迷惑ばかり言ってる。博人はそんなこと思ってないの。
自信持ちなさいよ」
「でもわたし…難病だし…」
「それがなによ。そんなこと関係ないわよ。
大事なのは、互いに愛し合っていること、でしょ?」
「ほのちゃん…」
「ね、しっかりするのよ。今からそっち、行くから。博人も行くからね。しっかりしてよ」
「ありがとう…、ほのちゃん…」
「うん。博人に代わるね」
「うん…」

「もしもし、心愛ちゃん!?」
「ひろと、さん…」
「今すぐ、そっち行くから。待ってて」博人の優しい声が、心愛を癒した。
「嬉しい…ありがとう、ひろとさん…ごめんなさい…わたし、ひろとさんに迷惑ばかり…」
「迷惑なんかじゃない」博人ははっきりと言った。
「ほんと…?」
「ほんと」
「…ありがとう、ひろとさ…」
「心愛ちゃん…?」

ばたん、という物音がして、心愛の声が途切れた。

「心愛ちゃん…?心愛ちゃん…!」
博人は何度も心愛を呼んだ。
しかし何の反応もない。不気味な静けさだけが、そこにはあった。