希望の夢路

「心愛ちゃん」
「はい」
「ずーっと、一緒にいようね」
「はい！」
彼女は、笑顔になった。
僕と彼女は、リビングへ向かおうと手を繋いで歩いていくと、保乃果と智也の話し声が聞こえた。待てよ、まだ居るのかこいつらは。もういないと思っていたが、まだいたんだな。
「あっ、博人…！」
「心愛！？」
保乃果と智也が驚いて固まった。
まずい。この状況はまずいぞ。
もし、僕が智也を何度も殴ったってことが心愛ちゃんに分かりでもしたら…今度こそ心愛ちゃんに嫌われるかもしれない。あいつの顔には、僕が殴った痣がくっきり残っているから、もしかしたら心愛ちゃんは僕を嫌いになってしまうかも…。
感情を抑えられず、あろうことかあいつを殴ってしまうなんて。
しかも、何度も。
でも、僕は許せなかったんだよ。
心愛ちゃんを奪い、傷付け苦しめ、
君の左目の世界を奪った智也を、
僕は許すことができなかった。
心の狭い男だと笑うのかな、君は。
それとも、怒るのかな。
君に嫌われたら、僕は生きていけないよ。

「…智也？」
あいつの声のする方へ、彼女はゆっくりと歩いていく。やめてくれ。
あいつのところへ、いや、あいつの近くには行かないでくれ。
「どうしたの、智也！？」
彼女は、智也の顔の痣に触れた。
罪悪感が僕を締め付ける。
「大したことねーよ」
悪ぶってはいるが、あいつは嬉しそうな顔をしている。彼女に心配されるあいつは、とても幸せそうな顔をしている。やっぱり、あいつはまだ心愛のことが大好きなんだな。
「でも…こんなに…痛い？」
彼女がすごくあいつのことを心配してあいつの顔をぺたぺた触るから、殴った張本人の僕は罪悪感と嫉妬で不機嫌になりつつある。
「痛くねーよ」
あいつが、ちらりと僕を見た。
「智也？」
彼女は、右目から見える智也の視線を辿って振り返った。振り返った彼女は、僕と智也を交互に見た。
「博人さん…？智也、どうしてそんな怖い顔して博人さんを見るの？」
彼女は、不思議そうに智也を見た。