「ひろくんは?」
「ん?何が?」
「だって…ひろくんは興味あるんでしょ?芸術とか」
「ん?ないよ」
「えっ、ないの?」
彼女は目を瞬かせて不思議そうに僕を見た。
「うん」
「えっ、だって…」
彼女は、少し混乱しているようだ。
「ひろくんが言ったんじゃない、美術館に行こうって。
だからてっきり、ひろくん絵画に興味があるものとばかり…」
彼女は目を丸くして僕を見ていた。
「心愛ちゃんに、喜んでほしかったから。だから美術館にした」
「ひろくん…」
「それに、ずっとこの美術館に行きたいって言ってたじゃないか」
「よく覚えてたね、そんなこと」
「まあね」
僕が自信満々に言うと、彼女はまたしても、ふふふと笑った。
「何だよ」
「ううん、なんでもない。ありがとう、ひろくん」
彼女は僕の手を少し強く握った。
「でも、興味もないのに美術館に…」
「心愛ちゃんと一緒だから楽しいんだよ」
「本当?つまらなくない?」
「つまらなくないよ。寧ろ、楽しい」
「ありがとう、ひろくん。ひろくんって、すごく優しい。
私、幸せだなあ、こんな素敵な人と…」
「ありがとう、心愛ちゃん」
僕は、彼女をふわりと抱き締めた。彼女は、僕の腕の中で微笑んでいた。
それがまた、美しい。