「心愛ちゃん」
「はい、なんですか?」
「今夜は、遅くなるかもしれないよ。それでも、大丈夫?」
「はい!」
彼女は明るい声で即答した。
「本当に、いいの?」
「はい、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「迷惑じゃ、ないか…?」
「もう、迷惑じゃないってさっきから言ってるでしょ」
彼女はきっと、口を尖らせている。
たぶん。
「博人さん心配しすぎ!」
「ん、…うん、ごめん」
「どうして謝るんですか?博人さん、何も悪くないのに」
「いや、まあ…そうなんだけどさ」
「博人さん、私今日、博人さんの家に泊まります」
「…え?」
ん?今、なんて言った?
「もう、だーかーらー!私博人さんの家に泊まります!」
彼女が腰に両手を当てて頬を膨らませている姿が目に浮かぶのは、何故だろう。ああ、想像しただけでも可愛い。

「博人さん、私すぐ行きますから」
「いや、僕が行く」
「でも」
「迎えに行くから待ってて」
「はい、気をつけて…」
「うん」
僕は、携帯を片手に持ち彼女の家へと急いだ。

「あっ、博人さ〜ん♡」
彼女の家のインターホンを鳴らすと、
意外にも甘々な彼女の声が聞こえた。
何だ?いつもよりも甘々な気がするのは、気のせい、じゃーない!
「博人さん、遅い……」
彼女は拗ねている。
ちらっと僕を見ると、彼女は僕にぎゅっと抱きついた。
お?なんだ?
今日はやけに…甘えんぼうだな?
「どうしたんだよ、甘えんぼちゃん」
「ぬうっ、私、甘えんぼちゃんじゃない!心愛だもんっ!」
「はいはい、そうだね」
僕は彼女の頭を撫でた。
彼女の家に来たのは、これが二回目。
僕を出迎えた彼女の言葉の後には、
確実にハートマークがついていた。
今日は、べたべたしたい気分なのかな?