不快な物音が聞こえるが、身体は動かない。
手にはネバネバとした物体がこびりついている。これはガムテープかな。
私は呑気に考える。
そこで気づく、あれ?私何処にいるの?

「あ、ああ」声がなかなか発することが出来ない。渇いているのか?私は唾を飲み込もうとしたが口の中は完全に砂漠のようにサラサラだった。

周りを見渡すと、暗い倉庫のような場所。この場所は?
見覚えはない。

「あ」思わず声を出した。まあ、大きい声を出すことはできないのだが。そこには水のようなものが入ったバケツが置いてあるのが見える。

こんなところになぜいるのか以前に喉が渇いていた。それしか考えられないほど思考が停止していた。

どうにかしてあのバケツを得る方法を考えなくては。
改めて自分の状況を確認する。椅子に座らされ、手にはガムテープ?を巻き付けられている。

どうしよう?考えれば考えるほど絶望に追いやられる。
心の中に言葉が突然舞い降りてきた。
あれ?これ小説で読んだことある展開のような気がする。
確かその小説では主人公が後ろに倒れた時に椅子が壊れるような気がする。
でも、本の中のことじゃん。とは考える気力は私には無い。
すぐに倒れる。死んでもいいと思った。勿論怖さはあったが恐怖はそれ以前に嫌ほど感じていた。

ガン、軽い音が響いて椅子が壊れた。
痛いなあ、顔を起こすと手にはガムテープは付いているが、椅子は粉々になっていた。死ななくて良かった。
私はバケツに駆け寄ると、水を飲んだ。
砂浜にオアシスが出来た。